薄橙色の立方体がこちらに向かってくる。それの表面は中心に渦を巻き、皮を内側へと無理やり引っ張るように見えた。それをまじまじ見ると、これは人の顔とわかった。
「かわいそうに、情報量刈り込み事故に遭ったのだろう。」
物質にはそれが固有であることを証明する情報量、つまり分散を有している。これがなんらかの原因で「刈り込み」されてしまう。すると、当然情報量は失われて物質に歪みが発生する。これが情報量刈り込み事故である。
意識が戻った。長い渋滞に巻き込まれてうたた寝をしていた。今の夢は非常に示唆的で、何か本質が隠されてると直感すると、車が流れ出す。どうやら、渋滞は事故が原因らしい。その証拠に、横転する極彩色の宣伝車はその輪郭が大気に溶け込んでいた。